クレジットカード現金化の違法性や注意点

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クレジットカード現金化とは?

クレジットカード現金化は、クレジットカードに付与されているショッピング枠を換金する行為です。

ショッピング枠

クレジットカードには、キャッシング枠とショッピング枠の2つの機能が備わっていて、キャッシング枠は、消費者金融や銀行カードローンなどと同様に、現金を借りることができます。ショッピング枠は、クレジットカードを買い物に利用するために付与された枠で、通常、現金を借りるのには利用できません。

ショッピング枠を換金

クレジットカード現金化は、本来であれば現金を借りるのに使えないショッピング枠を、無理やり換金してしまおうというサービスです。

クレジットカード現金化の歴史

クレジットカード現金化の台頭は、後述する「総量規制」と深い関連性があります。しかし、総量規制が導入された2010年6月以前からクレジットカード現金化は存在したようです。1980年代には、既に存在していたという説もあり、予想以上に歴史のあるサービスのようです。

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総量規制とクレジットカード現金化

2006年から始まった貸金業法の改正に盛り込まれた、「過剰貸付けの抑制」のため、総量規制が導入されました。

総量規制とは

総量規制とは、年収によって個人の借入総額の上限が決定される仕組みです。年収の約1/3が上限になり、それ以上は借りることができません。

キャッシング枠(クレカ)、消費者金融が大打撃

総量規制を境に、懐事情が激変した家庭も多かったはずです。特に、貸金業法の下で営業するクレジットカード会社のキャッシング、消費者金融は大打撃を受けたことでしょう。業者側は顧客の減少、消費者側はキャッシュフローの悪化といった具合です。

専業主婦

総量規制の影響を受けやすいのが専業主婦です。個人での収入がないので、キャッシング枠や消費者金融からの借入れは絶望的です。厳密には、専業主婦であっても、「配偶者貸付」を利用することで、借入上限を引き上げることが可能です。

しかし、配偶者貸付には、配偶者の同意が必要になります。婚姻関係証明書(住民票写し)、収入証明書の提出が必要なので、普通の借入れに比べ、とても面倒になっています。夫に内緒でキャッシングしていた主婦などにとっては、致命的です。

低所得者

総量規制の導入には、そもそも低所得者の多重債務などもきっかけになっているので、当然、借入れは難しくなっています。

銀行カードローン

総量規制の施工によって大打撃を受けたクレジットカード会社や消費者金融ですが、その裏で銀行カードローンが見直されてきました。銀行カードローンは、総量規制が盛り込まれている貸金業法とは無関係の銀行が提供するサービスです。

そのため、消費者金融から銀行カードローンへ切り替える消費者も増えてきたのです。しかし、結局は、経済的弱者の多重債務を助長する結果になったようで、2018年1月から各銀行による即日融資の廃止や審査の厳格化がなされました。

また、銀行カードローンが総量規制外であっても、銀行による審査はありますので、やはり経済的弱者が融資してもらえる可能性は低くなります。

クレジットカード現金化

総量規制以降、一般消費者を取り巻く融資環境は、ますます厳しくなっています。そんな中でのクレジットカード現金化の台頭は、必然なのかもしれません。しかし、クレジットカード現金化の本質を知れば、決して消費者のためのサービスではないことが理解できるはずです。

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クレジットカード現金化の仕組みと特徴

ここでいうクレジットカード現金化とは、ネット上で申し込みをして、指定口座に振り込んでもらうタイプのサービスを指します。

イメージとしては、ショッピング枠でネット通販を利用して、その代わりに現金が口座に振り込まれる感じです。また、現金化までのプロセスは、方式によって異なってきます。

商品買取方式

ネット通販を利用して商品を購入し、その商品を業者に買い取ってもらうことで成立します。そのため、購入する商品は換金性の高いものに限定されます。

キャッシュバック方式

ネット通販を利用して購入した商品に、偶然、ショッピング枠から業者の取り分を差し引いた額の特典(現金)がもれなく付いてくるという、なんとも摩訶不思議な方式です。こちらのキャッシュバック方式が2018年現在では、主流のようです。

ショッピング枠は総量規制の対象外

クレジットカードのキャッシング枠は、総量規制の対象ですが、ショッピング枠は対象外です。ショッピング枠は、貸金業法ではなく、割賦販売法という法律の下で提供されています。

そのため、一括払い、分割払いにかかわらず、総量規制の対象にはなりません。また、ショッピング枠で購入した商品の所有権は、完済するまでクレジットカード会社にあります。

利用条件はショッピング枠が使えるか?

クレジットカード現金化は、簡単にいうとショッピング枠の換金です。そのため、ショッピング枠が使える状態であれば、属性にかかわらず、誰でも利用することができてしまいます。

業者によっては、特定ブランドでの現金化をお断りしていることもあるようですが、基本的にはショッピング枠が使えれば利用できます。このことから換金額の上限は、ショッピング枠の残高だとわかります。

返済はクレジットカード会社へ

業者から指定口座に現金が振り込まれるので、利用者は現金化の業者からお金を借りているイメージかもしれません。しかし、実際にはクレジットカード会社の後払い決済を利用しているにすぎません。

振り込みの時点で、業者の取り分となる手数料が差し引かれていますので、商品代金+金利をクレジットカード会社に返済することになります。

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業者の口説き文句から考える現金化の注意点

クレジットカード現金化の業者は、様々な口説き文句を用意して、経済的弱者を食い物にしようとします。そう「そこに需要があるから」などという、詭弁中の詭弁を免罪符にしながら…

高換金率

業者のホームページを確認してみると、高換金率を謳っているサービスがほとんどです。90%、95%なんて当たり前です。消費者からすれば、換金率が高い方がロスが少ないので、多くの人が換金率の高いサービスを選びたいはずです。

しかし、注意が必要で、ほとんどの業者が、換金額に応じて、換金率も変動する仕組みを採用しています。これは、消費者金融の金利と同様で、利用額が大きいほど、優遇された条件で利用できます。

ただし、現金化の業者は○○%~○○%表示ではなく、最大○○%で表示するので、勘違いしてしまう人もいるかもしれません。ちなみに、利用額の下限となる1万円~10万円の申し込みでは、80%前後に換金額が設定されることが多いようです。

80%以上は高換金率の優良店

クレジットカード現金化サービスを紹介しているホームページによると、この業界では利用額の下限での申し込みで、80%程度の換金率になれば、高換金率(笑)になるようです。仮に、10万円を換金率80%で現金化すると、8万円を10万円で買うことになります。

メルカリで現金売買が行われ社会問題に発展する時代なので、この暴利であっても、利用したい人はいるのでしょう。しかし、8万円を10万円で買うことに何の違和感も覚えないのは、かなりマズイ状況です。

現金化でローン一本化

この謳い文句も、なかなかのエグさです。本来、ローン一本化は、消費者金融や銀行が提供するサービスで、便宜上は多重債務者の救済策になっています。

「おまとめローン」というB層がいかにも好きそうなネーミングもそれを匂わせます。複数社からの借り入れ返済時の煩雑さを解消したり、優遇金利での借り入れがメリットです。

しかし、現金化でのローン一本化は、ショッピング枠の金利に、業者手数料(換金率)が上乗せされる点に注意です。また、ショッピング枠の金利は、分割回数が多くなればなるほど高金利になります。

わざわざ、既存のローン一本化サービスを差し置いて、現金化でのローン一本化を目指すあたり、かなりの切迫した状況が予測されますので、まず少ない分割回数での完済は無理なはずです。

この時点で、ローン一本化の本来のメリットである優遇金利が失われてしまいます。また、そもそも現金化を利用する人に、複数の借り入れを一本化できるほどの高額なショッピング枠が付与されているのかも疑問です。

なお、クレジットカードのキャッシング枠やショッピング枠は、カード会社により、その人に相応しい額かどうか定期的な見直しが行われています。さらに、ローン一本化は、本来、貸金業者の商品で、貸金業者でもない現金化の業者が掲げるのもいかがなものかと思います。

また、総量規制の例外として、「借り手が一方的に有利な借換え」は認められていることも覚えておきたいところです。おそらく、現金化でローン一本化を目指すアナタがたどり着かなければならないところは、現金化ではなく、債務整理等でしょう。

ショッピング枠は信用情報を傷つけない

多くの業者は、ショッピング枠と信用情報は、無関係と謳っています。しかし、本当にそうでしょうか?

ショッピング枠と信用情報を結びつける明確なソースは見つかりませんでしたが、ショッピング枠と同様に、割賦販売法の下で提供される携帯電話の割賦購入において、支払い遅延などがあった場合は、信用情報機関であるCICに登録されるとあります。

そして、CICは、その他の信用情報機関と情報共有をするCRINという協定を結んでいます。このことからも、ショッピング枠において、支払い遅延等の事故が起これば、金融ブラックリストとして見なされる可能性は、十分にあるのではないでしょうか。

一括・分割・リボ払いを選べるから安心

狂気の沙汰ともいえる謳い文句です。破産者製造機と名高いリボ払いを経済的弱者に勧めています。加えて、現金化を利用する人は、おそらく資金繰りが苦手なタイプでしょう。そんな人に返済状況を把握しにくいリボ払いを勧めてまで利益を得たいのが、現金化の業者やそれを紹介する人達です。

公安委員会の許可済

公安委員会の許可を鬼の首を取ったように掲げている業者もいます。いかにもクレジットカード現金化が、国に認められているかのような印象を覚えます。しかし、公安委員会の許可というのは、あくまでも古物営業の許可を指しています。

上で紹介したように現金化には、買取方式というタイプがあります。買取方式では、利用者から商品を買い取る必要があるので、古物営業に該当する可能性があり、古物営業法により各都道府県の公安委員会の許可が必要なのです。

さらに、商品を買い取る必要がない、キャッシュバック方式の業者も公安委員会の許可を掲げていることがあることから、明らかに印象操作を狙っていることがわかります。

業者を利用するとバレない?

現金化の仕組みを確認して、理解の早い方なら気づいたかと思われますが、「必ずしも業者に仲介してもらう必要はない」と感じたのではないでしょうか。

そんな消費者に対しての謳い文句がこれです。カードトラブル・ゼロなどと文面を変えて掲げている場合もありますが、これは決済代行サービスを利用している点も大きいです。

決済代行は、クレジットカード決済などの決済システムをパッケージ化して販売しているサービスです。クレジットカード決済を導入する方法には、カード会社と直接契約して、加盟店になる方法もあります。

しかし、その審査は厳しく、中・小規模のネットショップ程度では加盟店になれる可能性は少ないのです。

そこで役立つのが決済代行サービスです。決済代行を利用すれば、ショッピング枠の換金を事業にしている現金化の業者であっても、クレジットカード決済を導入することが可能です。

真偽は不明ですが、膨大な数の決済代行サービスの処理に、現金化のための決済を混ぜることによって、単体で決済する場合よりも、目立たなくなるという説があるようです。

また、個人的に気になるのは、現金化の業者が、どのくらいの料金で決済代行サービスを利用しているのかという部分です。

しかし、各決済代行サービスの料金が個別対応等で不透明なことが多く、決済代行サービスを利用した場合のボーダーラインが、どの程度になるのかを計算できなかったのは残念でした。

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クレジットカード現金化の違法性

クレジットカード会社の規約違反

まず大前提として、クレジットカード現金化は、カード会社の規約違反です。規約では、ショッピング枠は、あくまでも買い物をするために付与されたものであって、換金目的の利用は禁じられています。

カード会社の規約には、法的効力はないものの、カード利用停止等のペナルティが設けられています。

万が一、カード利用停止になった場合は、残債を一括請求される可能性が高くなります。その結果、債務整理を余儀なくされるのでは、本末転倒すぎます。

>>https://www.j-credit.or.jp/customer/attention/attention_05.html
(一般社団法人 日本クレジット協会 現金化に対しての注意喚起)

横領罪

ショッピング枠で購入した商品の所有権については、完済までクレジットカード会社にあると説明しました。そのため、所有権がカード利用者に移らないうちに、勝手に売ってしまったということで、横領罪に該当する可能性があるのではないか?といわれています。

これは、商品買取方式に該当するもので、その抜け道がキャッシュバック方式となっているのではないでしょうか。

出資法違反

2011年8月に全国初となる出資法違反による逮捕者が出ました。この事件のポイントは、警察側がキャッシュバック方式による現金化を「形式的な取引」と認定している点です。加えて、「実態として貸金業に当たる」と判断されている点も重要です。

具体的には、数十円から数百円程度の安価な商品を利用者に購入させて、特典として手数料を差し引いた現金を入金するという、キャッシュバック方式の常套手段です。その結果、「違法な金利(高金利)での貸付け」に該当し、出資法違反となりました。

出資法における利息上限は、年利109.5%(個人間)もしくは、年利20%になっていますが、本件では法定利息の10倍~20倍程度で貸付けられていました。

利息制限法

貸金業者は、上限金利を出資法と利息制限法によって制限されています。出資法の上限金利は年利20%です。利息制限法の上限金利は、貸付け金額に応じて年利15%~20%になります。貸付け金額によっては、出資法の上限金利と利息制限法の上限金利に、最大5%の差が生まれます。

しかし、結局は利息制限法の上限金利に左右され、なぜなら利息制限法の上限金利を上回り、出資法の上限金利内で貸付けを行った場合でも、貸金業法の法令違反と見なされ、行政処分の対象になってしまうからです。また、出資法の上限金利である年利20%を超える貸付けは、刑事罰の対象となります。

クレジットカード現金化が貸金業なら多くの業者が法定金利を超える

2011年8月に出資法違反で逮捕者が出た事件では、クレジットカード現金化の業者が「実態として貸金業に当たる」と判断されました。仮に、この見解が全ての業者に当てはまるとすれば、どの程度の金利で貸付けを行っているのかが気になります。

業界の通説では、10万円を現金化する際の換金率が80%程度であれば、高換金率ということになっています。この換金率8割で年利を計算してみると、2万円を金利分として支払っているので、年利25%です。

法定金利の上限となる年利20%なら18000円が上限になります。しかも、今回の計算は、あくまでも丁度、1年で完済した場合で比較しています。

もし、三カ月で返済した場合、年利100%、一カ月なら年利300%と、短期間で返済すればするほど、金利が跳ね上がっていきます。

現金化が貸金業に該当する場合、換金率が金利にどのように換算されるかはわかりませんが、社会通念に基づいて制定された上限金利である年利20%を逸脱した数字であるということは明らかです。

さらに、今回の計算は、現金化の業者が受け取る手数料分を金利換算しただけです。本来は、これに加えて、ショッピング枠の金利もクレジットカード会社に支払わなければなりません。

現金化に、出資法や利息制限法の上限金利が適用される場合、換金率単体に適用されるのか、換金率+ショッピング枠の金利で適用されるのかも不明ですが、後者の場合、さらにとんでもない金利になってしまいます。

ヤミ金の窓口に!?

現金化の違法性について考えてきましたが、これまで紹介したものとは、また違った危険性も秘めています。それが、現金化サービスがヤミ金融の窓口をやっているというものです。

該当するのは一部の業者かと思われますが、現金化を断り、その代替策としてヤミ金を斡旋します。現金化を利用する人は、かなりお金に困っています。そのため、こうしたヤミ金業者にとっては、よいカモなのです。

参考資料

>>http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/cre_genkinka.html
(独立行政法人 国民生活センター)

>>消費者庁による注意喚起「ストップ!クレジットカード現金化」(PDF)

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債務整理と意識改革

皮肉なことに借金トラブルから国民を救うための決まりである総量規制が、新たなトラブルを生み出すネット現金化の台頭を許してしまいました。消費者金融も銀行カードローンも、賢く使えば、キャッシュフローを円滑にしてくれる存在です。

しかし、現実は利用者の大半が、許容量を超えた借金をしてしまっている状況です。また、許容量を超えた借金に金銭感覚が麻痺してしまったのが、8万円を10万円で買うことを甘んじて受け入れるクレジットカード現金化の利用者ではないでしょうか。

そんな多重債務者の大きな一歩が債務整理であると思います。まず、現金化を利用している段階で、「継続的な収入」が必要な個人民事再生は厳しいかもしれません。任意整理についても、現在の状況に至った経緯を考えれば、かなりの意思と覚悟が必要になってくるでしょう。

そのため、多重債務者が再起を図るためには、自己破産も視野に入れて、熟考を重ねる必要がありそうです。自己破産には、免責不許可事由が存在しますが、「裁量免責」も存在します。裁量免責は、免責不許可事由に該当しても、免責許可相当の理由があれば、裁判所の判断で、免責許可をしてもらえる決まりです。