タイトルからは幻想水滸伝シリーズとは思えないゲーム。パッケージのキリルとヨーンのタッチも、これまでの幻水とは一線を画するので、最初はコナミがメインタイトルをほっぽって、つまらない作品を発売するのか?程度にしか感じませんでした。
しかし、よくよくホームページを確認すると、幻想水滸伝4の外伝的なポジションの作品だというではありませんか!!そういえば、この頃の私の幻水熱はかなりのもので、まだまだ毎日コナミのホームページをチェックしていたものです。
幻想水滸伝の外伝は、このラプソディアを含めて3作ほど発売していると思われますが、よく考えてみると、どの作品もチャレンジ精神が旺盛です。メインタイトルの王道RPGとは違って、1作目は2部構成のアドベンチャーゲームである幻想水滸外伝。
2作目は、カードゲームの幻想水滸伝カードストーリーズ。そして、3作目のラプソディアは、シミュレーションRPGで、まさか幻想水滸伝でSRPGをやるとは思いませんでした。
SRPG+幻想水滸伝は予想以上に相性が良かった
詳細な部分は後々語っていきますが、このSRPGと幻想水滸伝という異色の組み合わせは、予想以上の完成度でした。
この後に、発売された幻想水滸伝関連タイトルのどの作品と比べても、これ以上に完成しているタイトルは見受けられません。幻想水滸伝シリーズは、1で礎を築いた後、2で人気爆発。3でファンに違和感を覚えさせ、4でそれが確信に変わる。
その後の5では少し持ち直していて、幻想水滸伝の持ち味である作品間の繋がりこそ弱かったものの、システムはプレステ2にプラットフォームを移して正統進化した幻水1や2という感じです。
幻想水滸伝5は、ファンの間でも割と持ち直したという意見は多くて、それをファンに感じさせるのは、このラプソディアの存在も大きかったのではないか?とも思います。
幻想水滸伝4もこのシステムで良かったのでは?
ラプソディアの親作品である幻想水滸伝4ですが、1と2の物語から約150年前という時代設定で、3まで登場したキャラはお騒がせ娘のビッキーやエロ紋章師のジーン、執行者レックナート様を除いては、まさかのテッド君のみ、という仕様。
これテッド君のおかげで納得したユーザーも多くいるとは思いますが、テッド君がいなかったらどうなっていたことやら…。つまり、作品間の繋がりを持ち味とする手段を完全に断たれたのが4です。
加えて、今作の『27の真の紋章』は罰の紋章ということで、暗いストーリーが割と多めな幻水シリーズの中でも輪をかけてシリアス。
さらに、今作はクールーク皇国やガイエン公国に囲まれるような状態で存在する群島諸国の物語で、島々が舞台のため移動手段が専ら船です。これは予想以上の閉塞感と圧迫感を生み出し、そこに陰鬱とした時代設定が加わるものだから、かなり気が滅入った人も多そうです。
個人的には、ストーリーや時代設定はそれほど気になりませんでしたが、とにかく船での移動が面倒くさい。幻想水滸伝ワースト1を決めるならノンタイムで、この4を選ぶでしょう。
こんなん感じなので、どうせなら心機一転ラプソディア形式を導入して、異色のメインタイトルとして仕上げていたら、またファンの評価も違ったのではないでしょうか。どちらにしても異色ずくめなわけですし。
多人数で入れ代わり立ち代わりの攻撃って、幻想水滸伝の持ち味のひとつだと思っていて、戦闘参加メンバーが4人になってしまったのも痛かった。これもSPRGなら簡単に改善できます。
ラプソディア(Rhapsodia)の良かったところ
SRPGシステムがしっかりと昇華されている
難度はそれほどでもなく、この当時を考えると、簡単でも難しくもなくといったところです。戦闘システムが秀逸で、これまでのシリーズの戦闘の良いとこ取りのシステムは、予想以上にSRPGと幻想水滸伝の親和性が高いことを示してくれました。
幻水の持ち味である多数の仲間がチームワークで放つ、協力攻撃ももちろん存在して、メインタイトル同様、条件さえ揃えば乱発できるのが良かったです。
3から導入されたスキルシステムは、どちらかといえばSRPGでこそ輝く感じだと思うので、ラプソディアとの相性もバッチリでした。乗り物ユニットもあって、さり気なくライドオンできたりもします。
また、新たに属性陣が登場し、各キャラの得意属性によって、攻防力に+-の補正がかかったりする。ラプソディアの魅力は、これらの要素をバランス良く盛り込んでいる部分で、戦闘システムはかなり良かったと思います。
あと、3のトリニティサイトシステムは導入されなくて良かった(笑)
序盤のストーリーが秀逸
ラプソディアは、主人公キリルの幼少期が描かれる序盤と、その後の青年期という2部構成です。そのうち序盤のストーリーが素晴らしく、4のストーリーを補完するものになっています。
具体的には、海賊ブランドと罰の紋章の経緯や、キカとその恋人の海賊エドガー。そして、キリルとその父、ウォルターが中心となった物語なのですが、あまりにも前半の練り込みが素晴らしいため、青年期のお話は物足りなさを感じるくらいです。
4をプレイしてある程度ストーリーが頭に入っている人なら、序盤のハイペースに引き込まれていくことでしょう。個人的には、ペックが良い味だしてた感じで、4のあの怪物は実は人間だった!!
こうなってくると、ブランドへの忠誠心からくる数々の行動ということで、随分見方が変わってくるのではないでしょうか。私はジーンときちゃいました。
歴代最弱の『真の紋章』が歴代最強に!!
4では実現しなかったコンバートシステムですが、4とラプソディア間ではコンバートが可能です。スノウと4の主人公が青年期でも参戦してくれるのですが、4のストーリーで罰の紋章の許しを得た4様が馬鹿げた活躍をしやがります。
4の主人公は、歴代の中でもソウルイーターに次いで、真の紋章そのものを宿している主人公です。にもかかわらず罰の紋章は使い勝手が悪くハッキリ言って弱い。
しかし、ラプソディアの4様は、レベル2の『諸刃の剣』がヤバい威力で、魔力強化+レベルアップ時の魔力と魔防吟味により、文字通り罰をまき散らします。
これまでの歴代最強の主人公が宿す真の紋章は坊ちゃんが使うソウルイーターかと思われますが、そんなのは相手にならないくらいヤバい強さです。
戦闘評価システム
これは各戦闘がランクで評価されるシステムなのですが、最大のSランクを取得するとボーナスアイテムを貰えます。これがコレクター心をくすぐり、一週目で取得できなかったアイテムを二週目で取得していくといった楽しみができます。
また、仕組みがわかれば割と簡単にSランクを取得できて、属性陣の数と可能な限りのスピードクリアだったっけかな?そして、このボーナスアイテムに非売品の強力な装備が揃っているので、ボーナスをゲットしまくれば、どんどんパーティーが強化されていくってのも良かったです。
引き継ぎ要素が上手い
ラプソディアは、引き継ぎ要素の設定が上手いので、少なくとも2週は遊べるゲームです。レベルは引き継がれないので、2週目はSRPGヘビーユーザーの定番である能力を吟味して強さの限界を目指すこともできます。
2週目以降限定のララクルが序盤から加入してくれて、コイツがかなり強い。さらに、キメの細やかさも目立って、ラプソディアの語り部であるアンダルクが年老いた声になる、なんて設定も良かったですね。
ラプソディア(Rhapsodia)への要望
この当時のゲームとしては、かなり完成された作品だと感じたので、欠点ではなく、要望というかたちで気になった点をいくつか。
トロイが出演しない
4のストーリーで完結した?ということなのか、『海神の申し子』という中二病心をくすぐる二つ名で話題になったクールークのトロイさんが出演しなかったのは残念。
この人、敵としてはハイランドの狂皇子『ルカ・ブライト』に次ぐ存在感を持っていたのに残念。ほんと、このキャラを4だけで終わらせるのはもったいない。3以降の幻想水滸伝は、キャラの使い方が下手で、炎の英雄なんてその典型ですよね。非常にもったいない。
序盤ストーリーの完成度を後半にも…
序盤のストーリーは凄まじい完成度なのですが、後半は明らかにパワーダウンしてます。何か、淡々とストーリーが展開していく感じで、やはり敵側に癖のあるキャラクターが全くいないのが辛い。
そんな意味でのトロイ再出演なのですが、彼が出てくれれば、随分盛り上がりも違ったのではないでしょうか。ロジェはイマイチ立場が不安定なキャラですし、2の中盤の強敵であるルカ・ブライトが、今作ではマルティンと拍子抜け。
BGMは凝ってましたが、いかんせんキャラクターの存在感が華奢すぎます。
それと、1のアイン・ジード、2のハーン・カニンガムのような旧世代が最後にワンポイントとして登場してくれれば、さらにストーリーに深みがでたのではないでしょうか。
あと、主人公のキリルは赤月帝国なので、そっち方面の話題をもっと絡めてくれれば、以前からのファンはより楽しめそう。ただし、父であるウォルターが帝国を追放された身なので、難しいのでしょう。
赤月帝国の関係者としては、1のグレイスを彷彿とさせるスパイのハインズと、その部下クープとイマイチ。
仲間はもっと出して欲しかった
幻想水滸伝、最大の持ち味といっても過言ではないのが、それぞれのストーリーを抱えた108人の仲間です。
決して仲間が少ないというわけではありませんが、SRPGは基本的に仲間が多いのが当たり前なので、ラプソディア程度の人数では特に驚くといったことはありませんでした。
まだまだ出演できそうな仲間がたくさんいるはずで、テッドとアルドの物語なんかも良いですね。今作ではアンダルクが軍師役ということなんでしょうが、思い切ってエレノアを出しちゃっても良かったと思います。
なんせシルバーバーグの血筋なんで、実はウォルターと面識があった!なんて設定も面白そう。それと、4で登場したキャラと関連性がある新キャラを出演させて、もっと各々のストーリーを紡いで欲しかったですね。
気になるキャラ、強かったキャラ
シメオン
かなり気になるキャラクターでしたが、ラプソディアで多くを語られることはありませんでした。4の時間軸では大魔導師というポジションに紋章砲を作った張本人であるウォーロックがいますが、この爺さんよりもずっと大魔導師らしのがシメオンです。ブリーチの浦原喜助っぽい感じのキャラで、コイツなんか知ってるな臭が半端ない。
スノウ・フィンガフート
4での出来事を乗り越えた後のスノウで、なんか顔グラにも達観した感じが表れている。そこそこ使える程度のユニットで、特段強くはありませんが、そんな感じがお気に入りで、必ず使っていました。
また、序盤ではラズリルの裏通りでの戦闘で、チビ4様とスノウが一度だけ参戦して、4様の太刀筋を褒めるウォルターに対して、何か不満げな態度を見せるスノウもいます。
こんな頃から4様に劣等感を感じていたんですね。どうせなら、時空を超えてチビスノウとして使いたかった。とっても可愛らしい。
ミツバ
主要メンバーと、それ以外の仲間の能力差がかなり大きいのが今作なので、仲間は比較的多いゲームですが、ほとんど使えるメンバーがいません。
そんな中でも奮闘するのがミツバで、大剣を扱う女性剣士ということで、4の頃から人気があったような。スキルを上げると大剣での連続攻撃が可能になり、かなりのダメージソースになるキャラだったはず。
フレア
今作は弓兵が結構強い感じで、フレアを筆頭に、フレデリカ姉さん辺りはかなり使えました。また、弓兵は基本的にイワドリに乗れて、使い勝手が非常に良い。
ナレオ
見た目はパッとしない感じですが、大器晩成型でレベルが高くなってくるとかなり強い。パパ、ダリオ以上に活躍して、ゴズの紋章を使える数少ないキャラであるのも良い感じでした。君は男なのね(笑)。ずっと、女の子だと思ってた。
ララクル
2週目限定ですが、かなり序盤で仲間になってくれる超助っ人。ビャッコの紋章の力を最大限に使いこなせるユニットで、力を貯めて、次のターンに敵の懐に飛び込むと破壊力抜群の一撃をお見舞いできる。おそらく、4様の次に強いでしょう。
キリル
序盤はトラウマのため使いにくいけど、トラウマを克服してからは相当強い。デメリットなしで三倍撃を放てる唯一のユニットで、確か遠距離攻撃だったような。
キカ
前作同様かなりの強キャラ。固有の隼の紋章はレベル3で3倍撃を放てる貴重な紋章なので、フィニッシャーとして活躍してくれる。4でも大活躍だった双剣攻撃も使えます。
コルセリア
物語の中心人物なんだけど、魔法が使いにくい今作の戦闘では、あまり目立たない。キリルのように、何か主人公補正のような能力が欲しかった。別の意味で気になるキャラクター。
グレアム・クレイ
ラプソディアには登場しないキャラですが、国境の村で発生した『人間狩り事件』が気になるので、もっと掘り下げて欲しかった。この人の境遇って、100人隊長のハンフリー・ミンツと似たような感じで、赤月帝国ってのは、国境付近でよく事件が起こる国ですな~。カレッカの虐殺事件も割と国境に近い場所ですし。
ラプソディア(Rhapsodia)【総評】
2005年に発売ということで、リアルタイムRPGを追いかけることも、ほとんどなくなっていた時期です。その後、まともにリアルタイムでRPGをプレイしたのは幻想水滸伝5くらいしか思い出せず、だからこそ、その完成度は非常に印象深い。
ラプソディアは、幻想水滸伝とSRPGを組み合わせたのが勝因で、まさかここまでの良システムが誕生するとは思ってもみませんでした。従来のシステムに幻水要素が加わることで、SRPGがしっかりと昇華されています。
序盤のストーリーは、4を知っているプレーヤーなら、かなり引き込まれると思われるので、ツカミもばっちりだと言えるでしょう。
ストーリー的にはキャラクターが薄いこともあり、そこから伸び悩んだりしますが、そこはSRPGという戦闘主体のゲームシステムに助けられているのではないでしょうか。
かつて、樹帝戦紀というストーリーの概念が全くないSLGをプレイしたことがありますが、これはこれでとても楽しかったです。そんな意味で、キャラやストーリーが薄いなら思い切ってSRPGという選択肢は、素晴らしいのではないかと思います。
ラプソディアは、本作だけで終わらせるのはとても、もったいないので、幻想水滸伝の何かしらのエピソードをこの形式で語ってほしいものです。個人的には、幻想水滸伝ファンの永遠の謎でもある『ハイイースト動乱』なんてどうでしょうか?