火ノ丸相撲 作者の川田何者 感想 評価 漫画口コミレビュー

火ノ丸相撲の感想と漫画口コミレビューです。年季の入った画風なので熟練の漫画家を想像していたけど作者の川田さんが30代な事に酷く驚く。この令和の時代に「友情・努力・勝利」で王道漫画を描く、その気概に乾杯。

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火ノ丸相撲とは?

主人公「潮火ノ丸」は、小学生横綱の座に輝いた将来を嘱望される存在だった。しかし、中学生になると、身長の伸びない思わぬ壁に悩まされる。

かつては国宝「鬼丸」の名で呼ばれ、もてはやされたが、表舞台から遠ざかり、その名が語られる事もなくなっていく…

人々から忘れ去られた火ノ丸だったが、相撲への情熱は失っておらず、人知れず努力を続けていた。そんな彼が高校横綱からプロを目指す火ノ丸の相撲物語。

また、部員わずか1名の弱小大太刀相撲部が全国制覇をするまでの軌跡も見逃せない。

>>アニメ「火ノ丸相撲」公式サイト

>>『火ノ丸相撲』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト

連載当時が非常に印象深い作品

火ノ丸相撲は、ここ数年の中では非常に印象深い作品でした。

というのも、少年ジャンプは、現在、低迷期の真っただ中ですが、漫画の質の低下が異常です。

そして、個人的に漫画の質の低下が顕著化してきたと思う時期が2014年前後だったのです。内容もさる事ながら、特に絵のレベルの低下が酷い。

思えば、昨今の世論に耳を傾けると、友情だの、努力だの、勝利だのは古臭いなどと言われる時代です。また、最近の少年ジャンプの漫画にも、そういった言葉を本気で語る漫画が少なくなりました。(皆無?)

しかし、その実情は、王道物語を納得させるだけの説得力(画力)を備える骨太な漫画を描ける漫画家が激減した事も大きく関係していると思っています。結果、読者に過度な忖度をするような三流漫画家が蔓延るのです。

近年の少年ジャンプの漫画家に思うのは、クリエーターがユーザーの意見に耳を傾ける愚かさと、少年ジャンプで連載する意味や必要性について改めて考えて、ほしいという事ですね。

そんな時期に連載が始まった火ノ丸相撲ですが、この漫画が印象的なのは、伝統的なジャンプタッチを重んじ、この時代に少年ジャンプ王道である「友情、努力、勝利」を打ち出している点です。

この漫画は、絵が非常に上手く。物語も王道中の王道。また、冗長的な描写が少なく、当時は「これで、本当に続くのか!?」と驚いた程でした。この質で漫画を描いてコミックス20巻超えを達成したのは、本当に凄い。

特に完成度の高い、高校相撲編だけでも18巻ですからね。個人的にこの漫画を一言で表現するなら「とても綺麗な漫画」。その意味では、無駄なく流れるような展開を見せる「半沢直樹」などの作品とも通じる部分があるかもしれません。

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作者の川田って何者!?

本格的に漫画の感想に入る前に、まずは作者の川田氏を語りましょう。私は、基本的にクリエーターの人間性にまで興味が出る事は少ないタイプです。

少年ジャンプの漫画家に限定すれば、神である鳥山明を筆頭に、冨樫義博、松井優征、島袋光年くらいです。あと、最近は、るろ剣を読み返して、和月伸宏さんにもちょっと興味が出てきた。

好きなゲーム音楽の作曲家なら古代祐三、森彰彦、すぎやまこういち、くらいですね。

そして、この川田さんも気になったので調べてみました。

信じられないけど30代!?

まず驚くのが、初連載で「火ノ丸相撲」を描いた点と、この年季の入ったタッチを30代が描いている点。

私より2歳年上の方なんですが、在野に下ってるだけで、探せば今の30代にも、こんな古風で硬派な絵を描ける人がいるんですかね?昨今の世情を踏まえると、奇跡的な事のような気もします。

まさに、相撲漫画を描くためにあるような画風ですよね。

川田さんの経歴

週刊モーニングでデビューし、読み切り漫画をいくつか掲載した後に2009年の手塚賞佳作を受賞。また、「黒子のバスケ」でお馴染みの藤巻忠俊さんのアシスタントを務めた事もあるようです。

てか、藤巻氏の数倍は絵が上手いと思うんですが(爆笑)

「鮫島、最後の十五日」の佐藤タカヒロ氏には、思うところもあるようで、体の足りない小兵が正攻法で勝ちに行くという作風も似てますよね。

火ノ丸相撲の作者は死亡していない

これは多分、上に書いた佐藤タカヒロ氏の事ですね。「鮫島、最後の十五日」は、本当に良いところで作者が急死されてしまったので、残念です。

私は、「バチバチ」や「バチバチ BURST」の存在を知らなかったので、ややスロースターターを感じる漫画ではあったもの、中盤以降の追い込みは素直に面白かったです。

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火ノ丸相撲の魅力と面白い所

火ノ丸の強さを利用したツカミは秀逸

まぁ、漫画に厳しい私が「綺麗な漫画」と評すくらいなので、ツカミはお手本のように上手いです。

火ノ丸相撲の主人公である「潮火ノ丸」は、元小学生横綱です。周囲は将来を期待して国宝「鬼丸」と呼んでいたくらいなので、当然ながら高校に入った段階で、高い実力を備えています。

つまり、少年ジャンプの漫画には多い、「テニスの王子様」や「ヒカルの碁(佐為憑依状態)」などの主人公が最初から比較的高い能力を備えたタイプの漫画です。

このタイプの漫画の鉄板のツカミは、その主人公に「俺つえー」させる方法。

火ノ丸相撲でも、大太刀高校が不良高校という設定を利用し、番長「五條佑真」を相撲で張り倒す演出を見せました。更に、VS金盛、VS沙田、VS國崎辺りまで追い打ちをかけてきます。

大太刀高校の相撲部が部員1名の弱小相撲部なのも、今後の伸びしろを予感させて良い感じですよね。

画力がある

個人的に1番の評価ポイントです。少年ジャンプのココ数年の新連載で、これだけの画力を備えた漫画家って多分川田さんだけです。

この画力というのは、絵の説得力の事で、単純に絵が上手いだけでは宿らないです。無論、歴代トップは鳥山明のドラゴンボールで、あの人の絵の説得力は神クラス。もう、ぶっちゃけ内容なんてどうでもよいと思わせる凄みを持ってる。

今の少年ジャンプは画力という意味では悲惨な状況ですが、実は少年ジャンプで漫画を描く上で、本来、画力というのは非常に重要なのです。

少年ジャンプの読者層は、少年という言葉からもわかるとおり、本来は子供です。(現実はわかりませんが)

子供の読解力など、たかが知れているので、少年誌の漫画家には、より絵で魅せる能力が必要になります。

そんな意味では、あのど下手な絵で凄まじい人気を誇った「鬼滅の刃」には、非常に興味をそそられると共に、若年層の審美眼のオワコン化に危機感を覚えます。まぁ、鬼滅の刃は、おそらくアニメが成功の秘訣なんでしょうね?

バトルシーンが上手い

読み直す前にバトルシーンが下手なゴールデンカムイを読んでいたので、余計に目立ちますが、この漫画はバトルシーンが、とても上手いです。

バトルシーンの下手な漫画というのは、描写が、結果だけ提出されたような感じになってしまうのですが、火ノ丸相撲はバトルシーンを読んでいると、行間を読めるんです。

まぁ、これはコマとコマの間に何があったかを読者に鮮明に想像させられるという意味なのですが、この部分が非常に上手い。

特に好きなのが、潮火ノ丸の「ぶちかまし」や電車道です。電車道なんかは、火ノ丸の後ろに2本わだちがあるだけなんですが、その前後の描写が上手いので、めちゃくちゃ迫力があるんですよね。

もちろん、久世草介の電車道も素敵です。あとは、國崎チヒロに対して放った「素首落とし」のシーンなんかも好きです。静から動、動から静へのメリハリが素晴らしい。

五條佑真が影の主人公

火ノ丸相撲は、主人公が最初から比較的高い能力を持っている漫画と言いました。

しかし、この漫画は、影の主人公である五條佑真の存在により、相撲初心者が相撲の魅力に触れ、少しずつ引き込まれていくという、追体験も可能なのです。

佑真は、大太刀高校の番長で、当初は相撲を馬鹿にしていました。しかも、相撲部部長の小関信也をいじめ、事あるごとに彼の相撲を邪魔していたのです。

そんな佑真が転校生の火ノ丸に大敗を喫し、彼の強さの根源に興味が出てきます。そして、火ノ丸や部長と共に相撲に打ち込むうちに、相撲そのものの魅力に気づくようになります。

しかし、相撲の魅力を知れば知るほど、部長の小関信也から奪った時間の残酷さと罪深さにも気づくようになります。

この相撲と贖罪の間に挟まれて葛藤する彼がこの漫画の魅力のひとつだとも思いました。

主要メンバーが魅力的すぎる!?

ほんと、大太刀高校のレギュラーメンバーが素敵すぎる。弱小相撲部なので、最終的にもわずか6名の少数精鋭です。

火ノ丸の魅力はいわずもがな、上で紹介した五條佑真も相当な良キャラです。また、実践経験を積むたびに覚醒していく小関信也も魅力的で、大相撲での火ノ丸との一戦は熱かった。

大太刀高校の救世主となったレスリング国体王者の國崎千比路も、スポーツ漫画における救世主キャラのツボをおさえています。ルーキーズで言ったら赤星ですね。

個人主義で我が道を行き団体戦など意に介さなかった國崎が、スポーツ初心者の蛍の泥臭い試合に奮起するシーンは、めちゃくちゃ熱くなりました。

また、後に「国宝喰い」と呼ばれるようになる彼の頼もしさも魅力のひとつでしょう。

そして、満を持して登場した火ノ丸のかつての親友である「辻桐仁」。典型的な策士キャラで、大太刀高校の監督兼スーパーサブを務めます。

わずか20秒しか全力で運動できない肺疾患を抱えるものの、相撲の実力は折り紙付き、というピーキーなキャラ。

こんな魅力的な主要キャラクターたちが織り成す汗と涙の高校相撲物語は必見です。また、大相撲編では、火ノ丸と冴ノ山の師弟関係が素敵でした。

漫画に無駄がない

川田さんは、30代にして、王道中の王道の漫画の描きます。火ノ丸相撲という漫画は、基本的に寄り道はほとんどなく、潮火ノ丸とその仲間たちが着々と高校相撲の頂点を目指す物語です。

また、その際の描写にも冗長的な表現は、ほとんど見受けられず、これが最近の質の低い漫画との大きな違いです。

このタイプの漫画というのは、モロに漫画の質を試されるので、この組み立て方で20巻続いたのは快挙と言えるかと思います。

Hulu(フールー)なら無料期間中に火ノ丸相撲アニメを視聴可能です。

Renta!なら火ノ丸相撲1巻から最終巻まで試し読みが可能です。