ミスターフルスイング(Mr.FULLSWING)の評価口コミレビューと感想。野球素人の作者「鈴木信也」氏のスポコン&ギャグ漫画。ギャグと野球の割合が半々という常軌を逸した意欲作。その強烈なアクはファンを捕えて放さない。
ミスターフルスイング(Mr.FULLSWING)とは?
野球ド素人の主人公「猿野天国」が、かつての古豪でありながら近年低迷する十二支高校で甲子園出場を目指す物語。
大打者「村中紀洋」が母校で打ち立てた記録を破り、ミスターフルスイングの伝説は動き出す。
猿野天国は、前述のとおり野球素人ながら、常人離れした怪力を持つ男。そんな彼が高校野球から甲子園を目指す、無謀とも思える作品。
また、作者の鈴木信也も野球経験がなく、足りない経験と知識をギャグで埋めようとした痛快スポコン野球ギャグ漫画でもある。
場合によっては野球パートとギャグパートが半々で展開され、シリアスなシーンかと思いきや、何の脈絡もなく猿野のギャグが炸裂したりする様は、ある意味カオス。
掲載雑誌 | 少年ジャンプ |
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連載開始 | 2001年23号 |
連載終了 | 2006年23号 |
コミックス | 1巻~24巻 |
作者 | 鈴木信也 |
漫画ジャンル | オリジナル(ギャグ&スポーツのハーフ&ハーフ) |
ライバル作品 (連載開始当時) | 世紀末リーダー伝たけし!/ホイッスル!/ルーキーズ/ライジングインパクト/テニスの王子様/ボボボーボ・ボーボボ |
群雄割拠の時代を生き抜く
ミスフル連載当時の連載作品をあらためて見返して驚いたのですが、凄まじい時代ですよね。
ジャンルに関連したライバル作品だけでも、ルーキーズやテニスの王子様を筆頭に、ギャグジャンルからは世紀末リーダー伝たけし。また、ライジングインパクトやホイッスルも名作です。
さらに視野を広げると、怪物漫画のワンピースやナルト、HUNTER×HUNTERをはじめ、シャーマンキング、ヒカルの碁、遊戯王、ブラックキャット、ストーンオーシャン(ジョジョ6)などなど。当然、少年ジャンプの殿堂「こち亀」も連載中。
そして、ミスフルの連載後にもブリーチ、アイシールド21と続くわけですから、よう、この面子相手にコミックス24巻まで連載できたな!!という感じです。
漫画の量と質を踏まえると、ワンピース(1997年)~アイシールド21(2002年)って、少年ジャンプの絶頂期と言えるかもしれませんね。ドラゴンボール連載時もここまでの量と質は揃ってなかったはずです。
スポーツ系に限れば、他は全て真面目なスポーツ漫画なので、ギャグ&スポーツ半々のオリジナルジャンルで攻めたのは大正解だと思います。
質なら、ナルトやHUNTER×HUNTER、ヒカルの碁に勝てませんし。純粋なスポーツならルーキーズやライジングインパクト、アイシールド21に太刀打ちできません。
ちなみに、ミスフルは女子人気もそこそこあったようですが、その観点から考えると絶対的壁としてテニスの王子様が立ちはだかります。
連載当時はパワプロでのミスフル選手作成に明け暮れる
ミスフルが連載していた当時は、小学生や中学生の頃に比べて、お小遣いに余裕があった時期です。
時間も豊富にあったので、最もパワプロに時間を使った時期でもありました。そして、思い出深いのが、パワプロのサクセスでミスフルの選手作成に夢中になっていた事です。
このくらいの時期のパワプロは、投球モーションや打撃フォームのバリエーションが劇的に増え、オリジナル変化球も習得できるようになりました。
そのため、犬飼冥の四大秘球をはじめ、能力のみなら、かなりミスフルの登場キャラに似せて作る事ができたんですよね。
ふと、同じような事をやっている人がいないかと、インターネットを検索してみると、それなりにいて、凄まじい親近感を感じたのを覚えています。
意外に難しいのが、兎丸比乃とかで、能力を似せるのは容易ですが、原作通りならパワーが足りな過ぎて、クソの役にも立たねぇ(笑)。かといって、パワーCとかBにしちゃうと、兎丸じゃないし…
打撃フォームのギロチンも流石にないし、彼の走力を15にしちゃうと、相対的に他のメンバーの走力はB以下になってしまうのもジレンマ。
ミスターフルスイングの魅力と面白い所
野球素人だからできたギャグと野球の融合
個人的に、ミスフルは野球漫画として評価するというよりかは、ギャグ漫画として評価しています。
特に、主人公の猿野天国と親友の沢松健吾の織り成す漫才は、90年代以降の少年ジャンプ作品では上位に食い込むのではないでしょうか?
私としては、「世紀末リーダー伝たけし」以来の逸材かと思いました。
また、途中から天国のギャグパートに参戦する子津忠之介と辰羅川信二のツッコミも冴えわたります。
さらに、作者の鈴木さんが、70年代生まれから80年代生まれくらいの人に刺さるギャグを描けるのも大きかったと思います。
その意味では時代を選ぶギャグ漫画なのかもしれません。今の若い世代の人は「チャレメ出身」とか言われても、琴線に触れませんよね。赤ペン先生とかも知らなさそう。
それと、構成を考えずに、無理やりギャグパートをぶち込む漫画なので、ギャグパートと野球パートを切り分けて読める読者力も求められそうです。
野球をあまり知らない方が入り込みやすい
作者本人もコミックスで語っていたのですが、野球未経験という知識のなさが、執筆活動を妨げる事もあったようです。
ミスフルは、あくまでも野球素人によるギャグ&野球漫画なので、野球にあまり詳しくない方がすんなり入り込めるのではないでしょうか。
私は、野球に関しては一般的な知識しかありませんし、そこまでルールにも詳しくないので、野球ルールを逸脱するような描写にも特に違和感を感じませんでした。
この部分を度外視して読めれば、試合展開そのものは割と上手かったのではないかと思いました。しっかりと、ここぞという場面で主人公の猿野天国にスポットライトが当たりますよね。
後半の犬飼と御柳芭唐の和解なんかも王道で良かったですし、剛の秘打法「覇竹」習得なんかも少年ジャンプお約束ですよね。
このように、別に普通のスポコン漫画も描こうと思えば描ける人なんですよね。鈴木さんは
必殺技が少年心をくすぐる
キャプテン翼のタイガーシュートや雷獣シュートまでとは言いませんが、スポーツ漫画としては必殺技のツボを心得ているのではないかと思います。
だからこそ、パワプロのサクセスモードでの選手作成に夢中になっていたわけですし。
個人的にはキャプ翼やドッジ弾平に通ずる部分があるのではないかと思いました。
ちなみに、虎鉄の中学生時代のクラスメートである雛壇祀のルークスライダー(スライダー)、キングスライダー(Vスライダー)、クイーンスライダー(Sスライダー)が好き。
球速を上げて、同じような球種の選手をパワプロのサクセスで作成すると、めっちゃ活躍する。特にパワプロ11におけるSスライダーは凶悪すぎる。
ミスフルの投手を再現したら、雛壇はかなり活躍してくれそうです。
あと、蛇神パイセンの技も凄い。というかウケる。ミスフルの必殺技の中には、割とぶっ飛んだ技が多いですが、彼の技だけでは別格です。
好きなキャラ
ギャグキャラなら、猿野、子津、辰羅川はいわずもがな、音瓶(メガネ)高校の別紅飴理が好きです。口癖の「よくなくな~い?」がツボった。あとココの監督の「アレ」という口癖も好き。
あくまでもスポーツという観点なら、子津忠之介も好きですね。十二支の賊軍VS雄軍ではクロスファイヤー投法で先輩方をかく乱したのも熱かったですし、アンダースローの燕を習得し、十二支の秘密兵器になったのも良かったです。
また、代打の切り札「獅子川文」も素敵です。ルーキーズの平塚じゃないですけど、悪球打ちを生業にするキャラは、救世主感が半端じゃありませんよね。
ミスターフルスイングの気になる点
5巻以降持ち前のギャグが鳴りを潜める
この漫画、5巻くらいから猿野の親友である沢松の登場回数が激減します。これに伴って、ギャグの質が落ちるんです。
そのため、ミスフルをギャグ漫画として見れば、1巻~5巻くらいまでが全盛期です。
5巻以降もギャグパートは多いのですが、猿野が一人でスベっている状況も多くなり、1巻から5巻までに見受けられた洗練された掛け合いは鳴りを潜めます。
さらに、作者がギャグに味を占めたのか、天国と凪の入れ替わり編や、天国の退部編など茶番が多くなります。特に鳥居剣菱が出てくる辺りは、かなり下降気味に…
しかし、夏の埼玉地区予選がスタートすると、それなりに持ち直すんですけどね。
後半は少年ジャンプ特有のインフレに難儀する
少年ジャンプのスポーツ漫画で変態技の応酬をやってしまうと、インフレに対応するのが大変です。もれなく、ミスフルも難儀しているようでした。
特に、セブンブリッジ学院と黒撰高校、華武高校のパワーバランスに違和感を感じました。
ただし、この漫画はインフレの対応策が潔く、これ以上は難しいと踏んだのか、埼玉予選で十二支をセブンブリッジに敗退させ、県別選抜戦(各県オールスター)に移行させます。
この処世術に関しては、なかなか賢いところで、あのまま甲子園編をやってしまうと、それこそ決勝は200キロのストレートを誇る怪物投手とかが誕生してしまいそうです(笑)
芸人猿野天国のギャグパート名場面集
1巻1発目
意中の女性である「鳥居凪」が野球部マネージャーだった事が判明して、ショックを受ける猿野。
そのショックの度合いは、ドラゴンボールのグレートサイヤマン編以来らしい(笑)
これは、リアルタイムでドラゴンボールを見ていた少年少女からすると、マジでわかる。セル編からの落差もあったし、1週か2週空いての魔神ブウ編スタートだったんだよね。
散々待たせて「コレかよっ」みたいな
1巻5発目
未経験者ゼロの難関十二支高校の野球部入部試験に、ド素人の猿野が巨人のユニフォームかつ背番号55番(松井秀樹)を付けて参加。
凄まじい胆力!!!これリアルを想像したらめっちゃウケるよね。しかも、意気揚々とドヤ顔だからね(爆笑)
参加者Bの解説によると「ライブ行く時だけ精一杯パンクな格好していくあの精神と一緒」らしい
1巻6発目
砲丸投げをハンマー投げと勘違いした猿野に対して、参加者がありったけの誠意(殺意)で応戦。
しかし、羊谷監督にその機転を評価された猿野の一言。「誰がなんちゃって巨人軍だって!?」「誰が元いいとも青年隊だって!?」「誰がサザンのひげに似てるって」
部員A、B及び読者「そんな事はいってねえ~」。ギャグのテンポがいいね。
2巻11発目
犬飼冥のウインドミルに意気消沈した猿野の一言。
猿野「コロコロとボンボン間違えて買うのはもうヤメにする」、辰羅川「まだ読んでたんですか…」
猿野「進研ゼミのマンガ熟読するのももうヤメるわ」、辰羅川「チャレメ出身だったんですか!?」
辰羅川のツッコミセンス半端ねぇ~。子津と辰羅川はミスフルにおける2大ツッコミキャラだよね。私も進研ゼミには全く興味ないのに漫画だけ見てた(笑)
4巻32発目
猿野の弱点である変化球を数学的に解説する沢松。
なぜか数式の合間に「たらちゃん」という謎の言葉がたくさん入っている(爆笑)。沢松いわく野球関係の隠語らしい(笑)
ちなみに、カップ焼きそばの湯切りの時にメンが飛び出る状況や、ウォシュレットで自爆してトイレを見ずびたしにする状況も「たらちゃん」と言うらしい。お母さんの「何たらちゃんしてんのよ!」の描写がめっちゃウケた。
そして、流石は猿野。「トイレの中ブタ開けっぱなしにしててケツがはさまっちまうのも’’たらちゃん’’か?」と果敢に切り返す。
しかし、沢松いわく、それは「マスオさん」と言うらしい(爆笑)
こんな突拍子もないギャグが、合間合間に1ページ丸々使って入ってきたりします(笑)。
14巻126発目
難敵。武軍装戦に勝利した猿野の「カッター、カッター(バットをカッターに持ち替えて喜んでいる)」というギャグに対して辰羅川のツッコミ。
辰羅川「試合のストレスでネタが先祖返りしてますよ……」。マジで見習いたいツッコミセンス。凡人なら、猿野の寒いギャグに大火傷する場面です(爆笑)

Renta!ならミスターフルスイング(Mr.FULLSWING)1巻から最終巻まで試し読みが可能です。ビッグボリューム版は、ずいぶん表紙が変ったような?