サルバト~レは「パケ買い」ならぬ「おと買い」した初めてのゲーム。サルゲッチュシリーズの陽気で、どこか憎めないテイストはどこへやら、シリアス路線で進む。ガチャメカ運動会という洗練されたコンセプトと、シリーズ中最高と言えるBGMの完成度が魅力。
ガチャメカスタジアム サルバト~レをプレイした経緯
サルバト~レの発売時期をサルゲッチュシリーズとして確認してみると、サルゲッチュ3の後になります。しかし、私は、サルゲッチュ3→ミリオンモンキーズの後にプレイしており、この順番でプレイしたからこその印象もあります。
私は、そもそもサルバト~レの存在は知らず、直前にプレイしたミリオンモンキーズの個人評価もかなり低いので、特別な理由がない限り、プレイに至らない作品だったかと思います。
しかし、この作品。めちゃくちゃ音楽が良いんです!!偶然、サントラを聴く機会があり、素晴らしい完成度だったので、ゲームにも興味がわきました。
サルゲッチュシリーズと言えば、初代のドラムンベースが局地的に話題になった程度で、スペクターとのラストバトルを除けば、そこまで印象的な音源はありません。
サルゲッチュ2は、内容的にも音源的にもイマイチ突き抜けきれないイメージで、唯一まともだったのがミニゲームのドッジサッカーフットサルのみ、という体たらく…。
そして、サルバト~レなのですが、本格的なテコ入れをしてきた感じで、これまでのシリーズの音楽とは曲調をガラッと変えてきました。
本作のストーリーは、新キャラのハルカとピポトロンを中心に、シリアスな展開が多いです。音楽もそんなストーリーにマッチするものになっています。
やはり、本作におけるシリアスの代名詞(笑)であるハルカのBGMは良いです。ピポトロンのテーマは、1番のサプライズ要素で、まさかサルゲッチュシリーズでこの曲調をやってくるとは思いませんでした。
プレイの決め手になったのは、「ピポトロンのテーマ」と「チャルのテーマ」です。どちらもミリオンモンキーズで聴けたような気がしますが、チャルのテーマは、ウイルスチャルのテーマというイメージが強かった。
そして、極めつけがボートステージのBGMで、愉快系BGMの中では、スーパーワギャンランドの「ボスバトル1」や星のカービィ スーパーDXの「グルメレース」と並ぶ楽しさ。
サルバト~レのアイディアは素晴らしい
メインシリーズであるサルゲッチュ2の後に発売されたゲームですが、2はアク取りに失敗して、旨味まで逃がしてしまった感じでした。
しかし、サルバト~レでは卍解(挽回、変換可能なのか!?)したといっても過言ではなく、とにかくシステムのアイディアが素晴らしいです。
本作のゲームシステムを端的に説明するなら「ガチャメカを使った運動会」。もう、これに尽きるでしょう。
メカボーやトビトンボといったシリーズお馴染みのガチャメカを使って、相手と殴り合い(笑)をしたり、障害物競争をしたりします。ガチャメカは初代に準じる感じで、マグネッターやミズテッポー等、サルゲッチュ2で追加されたものはありません。
さらに追加要素として、隣接するボタンにセットしたガチャメカの種類で変わる必殺技システムが登場しました。
サルゲッチュ2では飛躍させられなかったシステムを見事に昇華しました。しかし、次作となるサルゲッチュ3ではオミットされていて、非常に残念です。
アイディア力はスマブラに対抗しうる
サルゲッチュシリーズは、ある意味、任天堂のスマッシュブラザーズに対するアンチテーゼであると捉えています。その証拠に、「プレイステーション オールスター・バトルロイヤル」なるゲームにカケルが登場したりもしています。
ソニーと任天堂がスマブラのような王道バトルゲームで勝負してしまうと、IP力に勝る任天堂に軍配が上がるのは当然です。ゲーム業界全体が煮詰まったこのご時世に「スプラトゥーン」のような洗練されたIPを創造する化け物会社なんで。
スプラトゥーンの世間的な評価の高さは言うまでもありませんが、個人的にはまだまだ過小評価のような気がします。この創造性をマンネリ感が凄まじい、ポケモンなんかに逆輸入できると素晴らしい作品が誕生しそうです。
このように王道を行くと、スマブラには勝ち目がないからこそ、アイディア力で勝負なんです。シリーズのファンにガチャメカを使って何をしたい?という質問をすれば
割と多くのファンが、サルバト~レのような運動会や無双シリーズのような一騎当千を望んだのではないでしょうか?一騎当千の方は、ピポサル2001で失敗した感がある(笑、ちなみにプレイしてません)
そんなファンたちの願いをくみ取り、それなりの完成度にまとめ上げたのがサルバト~レです。正直、サルゲッチュ3の仕上がりを見る限り、ハードがPS2でも改良の余地は残されている感じなので、突き詰めれば、かなりいい線いくんじゃないでしょうか?
まぁ、ミリオンモンキーズで見事に失敗したわけですが…。しかし、ミリオンモンキーズは、サルバト~レの続編ではありますが、ジャンルが違うので、正統な続編とは言えません。
サルバト~レの面白さ
必殺技システム
サルゲッチュシリーズの操作は、とても単純です。コントローラーの各図形ボタンにガチャメカをセットし、それを切り替えてゲームを進めていきます。
本作では、もう一歩進んだ形として必殺技システムが導入されましたが、隣接する図形ボタンを同時押しで発生します。
このシステムの導入により、単純な操作性が損なわれる事はなく、子供から大人まで誰でも操作可能だと思います。マリオテニスGCにて導入された各キャラの必殺ショットのようなイメージですね。とても塩梅が良い。
必殺技システムのおかげで、攻撃のバリエーションが増えているので、単調になりがちだった前作までのシステムに良いアクセントとして働いています。
乱闘を尊重
メカボーステージは、単純な殴り合いなのですが、トビトンボステージやアスレチックステージは、ガチャメカを使って走破するのが目的です。
しかし、スポーツマンシップの則った純粋な競技ではなく、乱闘要素を残し、相手を妨害できるのは面白いです。
「ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会」的な要素がゲームシステムに見事にマッチし、ステージ途中で、相手を殴り倒し、棄権させた後、悠々とゴールする手法なんかも使えます。
こんな部分なんかは、前作のサルゲッチュ2で非常に好評だった、ドッジサッカーフットサルからきているのかもしれません。
声優が素敵
最近のゲームでは、考えられないくらい声優さんが豪華です。まして、キラータイトルならわかりますが、サルゲッチュシリーズのような中堅タイトルに、これだけ豪華な声優陣が揃うのは、本気でゲームを作ったからこそでしょう。
やっぱり、1番手はドラゴンボールの界王さまでお馴染みの「八奈見乗児」さんなんでしょうかねぇ~。ハカセの声優さんですが、この人がしゃべると、作品の締まりと和みが半端ありません。
次いで、私の大好きな声優さんでもある「伊倉一恵」さん。シリーズでは出番が少なめなカケルの親友ヒロキ役です。本作でも、それほど出番は多くありませんが、シリーズの中では結構喋る作品ではなかったかと。
さらに、今となっては貴重な「郷里大輔」さんがウッキーレッドの声優をやってます。本作では、サル召喚でのワンポイント出演です。
スペクターの声優も実力派の「坂本千夏」さんで、個人的にはザンボット3の神勝平が異常に記憶に残っているので、かなり嬉しい。
そして、見逃せないのが本作初登場となったグリッドコア(謎の男)役の「楠大典」さんです。ピポトロンの声も担当しているらしい。
いかにも悪の親玉らしい声で、台詞にめちゃくちゃ重みがあります。個人的には、あまり馴染みのない声優さんですが、本作では非常に印象に残りました。
特に嫌というほど発生させられる「ファンクションダメージコイル」の台詞は癖になり、発動と同時についつい喋りそうになる(笑)
サルバト~レの改良点
サルバト~レの改良点は、色々な意味でボリューム不足な点です。このボリューム不足が解消していれば、良作から名作になったかもしれません。
操作キャラが少ない
サルバト~レでは、最終的に8人のキャラを操作できるようになります。VSモードなら、ヒロキとダークヒロキも使えるので10人。
せっかくゲームシステムが素晴らしいのに、この点は残念です。特に気になったのが、ヒロキとスペクターを使えない点です。
ミリオンモンキーズでは、スペクターサイドのストーリーが追加され悲願達成か?という感じでしたが、システムの完成度が低く、残念な仕上がりに。
そんな意味では、ココでスペクターを操作キャラとして使えなかったのは非常に痛い…。加えて、ヒロキもVSモードのみの参戦で、必殺技などはカケルの流用なので、別に隠しキャラとしてストーリーに参戦させても良かったような。
さらに、欲を言えばウッキーピンクも操作キャラとして使いたかったです。必殺技でダークピンク(笑)に変身するとか面白そうです。
キャラ毎の格差が許容範囲を超える
基本的に、この手のゲームのキャラに性能差があるのは当たり前です。しかし、サルバト~レの場合、すこ~し、許容範囲を超えてしまっているかな?という感じ。
これもキャラ数の少なさが関係していて、カケル、ハルカ、ナツミ、サルチームに比べ、チャルとハカセ、ピポサルが弱すぎます。
特にシリーズではメインキャラに含まれるハカセやチャルが弱いのは致命的でした。これが、もう少しキャラの多いゲームならキャラ毎の個性で済みますが、8人という厳選されたキャラに、ここまで性能差があるのは痛いです。
ハカセは、ガチャメカ回りをもう少し強化して欲しかったのと、チャルは1つでも強力な必殺技が欲しかったですね。
ガチャメカ運動会の部分が少ない
ストーリーにおけるハイテクオリンピア・パートがガチャメカ運動会に相当する部分なのですが、後半はグリッドコアの登場により、シリアスモードで展開していきます。
後半は、敵殲滅か目的地到達が主なステージになるので、ガチャメカ運動会の部分は薄れていきます。ミリオンモンキーズも結局、シリアスを突き詰めた結果駄作になったので、運動会の部分はもっと強調して欲しかったですね。
ユーザーインタフェースにやや難あり
UI面では、セーブデータの置き場所が気になりました。サルバト~レでは、ゲームデータとキャラデータが別々に格納されています。
そのため、ステージをクリアして新しい装備を手に入れ、装着しようと思ったら、キャラエディット画面をロードして、セーブする必要があります。
ガチャメカのセットなどは、ステージ開始前のメニュー画面で可能ですが、この画面でキャラ装備の変更もできるようにして欲しかったです。
水メカとボートの操作性の悪さが異常
本作の水メカとボートの操作性は非常に難しいです。ボートは、前シリーズより難しかったのですが、水メカは完全な水中ステージで操作する事になるので、360度自由に動き回るには相当なテクニックが必要。
比較的、操作性の似ている戦車は、単純な事もあって、割と難なく操作できますが、水メカとボートは改善して欲しかったですね。
サルバト~レは、どのステージも爽快感がありますが、水中ステージと水上ステージを間に挟むと、気分に大ブレーキがかかります。特に水上ステージなんかは、BGMが凄まじく良いので、かなりもったいない。
サルバト~レのおすすめキャラ
ハルカ
本作でシリーズ初登場を果たしたキャラ。前ハイテクオリンピアの優勝者で、文武両道の天才。
ゲーム中では、その出木杉っぷりを遺憾なく発揮し、必殺技のスピンショットがめちゃくちゃ使いやすい。同時にセットされる事が多い、リップルストームも強力で、この2つの必殺技でゴリ押しできる。
ナツミ
メカボーを使わせた時の爽快感は、右に出るものなし。メカボーはスティック回転で、無限コンボが発生し、グリッドコアには非常に有効。
タメると薙刀風メカボーで連続突きしたりと、手軽な操作で多段ヒットを出せるキャラなので、使っていて楽しい。
サルチーム
サルチームは、5匹のピポサルを局面に応じて使い分けられるキャラ。ステージ中に入れ換え可能なら、さらに良かったが、残念ながら無理。
黒ピポサルの雷パチンガーは、5連発かつ感電効果があるので、非常に強力。また、青ピポサルのダッシュフープは、とても素早い。
必殺技は、サルUFOが強力で、効果が切れるまで敵をハメ続ける事ができる。さらに、アスレチックステージの移動手段としても使えるので、場合によっては大幅なタイム短縮が可能。
サルバト~レは音楽がシリーズ中で最高
本作を購入するきっかけにもなったのがサントラです。サルバト~レは、突出した曲があるというよりかは、全体的に曲の質が高く、サントラも通しで聴けます。
その総合力は、シリーズ中屈指で、そこら辺のゲームでは太刀打ちできないと思います。
ハルカのテーマ
後半シリアス全開で進んで行く、本作のメインテーマといっても過言ではないくらいマッチした曲。曲の仕上がりも、サルバト~レでは1番高いのではないでしょうか?
ハルカは、幼少期に母が死に、研究者の父は仕事で各地を飛び回るという、孤独を背負った少女です。曲調は、寡黙な天才児の内に秘めた孤独という感じで、まさにハルカを体現したような曲です。
また、エピソード1では、父親の研究所が何者かに襲撃された様子が描かれますが、その時のBGMでもあります。何か、必然や運命の残酷さを物語るような切ない曲調。
チャルのテーマ
ミリオンモンキーズのウイルスチャルのテーマとして耳に残っていたのですが、初出はサルバト~レのチャルのテーマです。
イメージ的には、ウイルスチャルのテーマの方がしっくりくるのですが、便利すぎる新技術への警鐘という感じの曲でしょうか?
少し恐怖感を煽るような曲調で、それでいて非常に斬新。まず、ほのぼの路線のメインシリーズでは聴けません。個人的には、アジアンテイストやエキゾチックを彷彿とさせます。
私って、この曲調好きなんでしょうね。この系統の最高峰が、ウルトラストリートファイター4の「エレナのテーマ」なんでしょうね。めちゃくちゃ好き。
ボート
異常な操作性の悪さとBGMの突き抜ける爽快感に変なテンションになってしまう曲(笑)。この曲の愉快さと疾走感は、数ある中でもトップクラス。
私が選ぶゲーム音楽の愉快系四天王にも名を連ねる名曲で、残る3つは「グルメレース」、「ボスバトル1(スーパーワギャンランド)」、「ダルシムのテーマ(ウルトラストリートファイター4)」。
ナツミのテーマ
うつろいやすいお年頃の女の子の心をポップに歌ってみました!?という感じで、めっちゃ好き。
音が音を追いかけるようなリズムの曲で、その部分が、次々に興味の対象が移り変わる気まぐれな感じを表現していて良いと思います。エピソード1のムービーも、まさにそんな感じだったし。
シリアスだったり、静かで透明な曲が多い本作なので、良いアクセントになりますよね。
トビトンボ
トビトンボステージの曲です。トビトンボというよりかは、巨大な綿毛につかまって、ふわふわと浮いているイメージで、とても聴き心地の良い和みソングです。
ステージの構造上、各キャラのトビトンボの回転音が鳴り響きますが、その音ともBGMがマッチする感じです。
サルバト~レのテーマ
透明感が半端ない曲で、なんかゾクゾクします。スタートメニュー画面で流れる曲なので、必然的に何度も聴く事になる。ここに名曲が使われているのは嬉しいですよね。
曲調としては、これから始まるオリンピアやゲームの前の高鳴る鼓動という感じかな。音の使い方が非常に上手い。
ファイナルバトル
「私の勝利は必然なのだよっ!?」と言わんばかりのベートーベンの「運命」的なイントロ(笑)。サルゲッチュシリーズ音源のアレンジが随所に垣間見られ、ファンには嬉しいポイント。
個人的には、初代サルゲッチュのラストバトルの方が好きなんですが、この曲も良曲です。
ここで終わらせるのはもったいない意欲作
サルバト~レを評価してきましたが、真っ先に思うのは、この作品をここで終わらせるのはもったいない、という事です。
コンセプトは、王道ゲームに届きうるような洗練されたものになっていますし、ぜひ、本作を飛躍させたかたちで、サルバト~レ2をプレイしてみたいですね。
ボリュームは、次世代ハードを利用すれば、何とでもなると思うので、サルゲッチュ3のグラフィックを引き継いだ、大迫力の運動会が楽しみです。
サウンド面でも、サントラが秀逸な仕上がりになっていて、サルゲッチュシリーズの音楽に慣れたプレーヤーは、良い意味で驚けるかと思います。
個人的には、サルバト~レの次作とドッジサッカーフットサルのボリュームアップVerの2本立てのゲームを出して欲しい。非常に難しいグラフィックの落としどころは、ぜひ私にご相談ください(笑)。
私に勝つ事など不可能なのだよっ!?