サルゲッチュ。このシリーズも初作が偉大な作品として記憶が残っています。前作サルゲッチュ2は、当時の新世代ハードであるプレステ2に移行するも、ゲーム業界ではよくある「初作の壁を打ち破れない」という典型的なパターンです。サルゲッチュ2の不本意な結果を考えれば、本作は今後のシリーズの命運を握る重要な局面であったと考えられるかもしれません。
サルゲッチュという偉大なる壁
個人的にプレステのアクションゲームで、素直に面白いと感じたゲームは、サルゲッチュとロックマンDASHの2作品。
このうちサルゲッチュは、1999年発売と後発ながら、プレステアクションの中で、不動の地位を築いた名作といえるのではないでしょうか。そんなサルゲッチュですが、後のシリーズ作品にいくつかの壁を残したと思います。
ガチャメカ
ガチャメカは、シリーズ通じての目的であるピポサルを捕まえるための道具でもあり、ステージギミックを突破するための道具でもあります。いわば、ゲームの肝ともいえる部分で、個人的にはサルゲッチュの段階で、完成形に達していたと思います。
メカボー、ゲットアミ、サルレーダー、パチンガー、トビトンボ、ダッシュフープ、メカヨンクの7つがゲーム中で主に使うガチャメカで、本当に無駄のないラインナップです。隠し要素的なマジックパンチは、もはや不要なレベルで、明らかにこの7つと比べると浮いてます。
サルゲッチュ2では、このガチャメカをさらに増やす方向性に舵取りをして、ミズテッポーやマグネッターなど、明らかにこねくり回した感が漂うアイテムが登場しました。それも2が劣化マンネリ作品に成り下がった理由でしょう。
ただ、初作の7つに納得できる理由でガチャメカをつけ足すのは、かなり難しいと私も思っていて、ある意味しかたがありません。
サルゲッチュ3では、逆にガチャメカ回りをシェイプアップして、バケルギアという変身システムを導入することで対応しています。これが3の成功ポイントでもあって、ガチャメカも1の最小限(完成形)に近いラインナップに戻りました。
偉大な主人公「カケル」
サルゲッチュを体現するキャラといえば、サルゲッチュの主人公である「カケル」と、敵の親玉である「スペクター」です。これも初作が作り上げた壁のひとつで、スペクターなどは、その後のシリーズでも親玉として君臨していることからも窺えると思います。
そんな意味で、次作以降の作品にしてみれば、初作は「specter」まさに、亡霊、幻影のような存在なのかもしれません。
カケルも、後に発売されたプレイステーション オールスターズ バトルロイヤルにスペクターを差し置いて参戦するほどのキャラになっていて、プレステを代表するキャラクターであることがわかります。
サルゲッチュ2では、そんなカケルの従兄弟のヒカルが主人公です。明らかにカケルの二番煎じなキャラで、またしてもマンネリ感を増幅させる結果に…。
さらに、2の失態は、隠し要素でカケルを登場させてしまった点で、これはもう制作陣がカケルというキャラクターの大きさにさじを投げたと同然なのです。これがカケルのライバルであるヒロキなら全然許せた。
サルゲッチュ2唯一の功績「ドッジサッカー フットサル」
サルゲッチュの偉大さ、というかサルゲッチュ2の欠点(笑)をつらつらと語ってきたわけですが、そんな2にも功績があります。それがミニゲームのドッジサッカー フットサルです。
このミニゲームは、完成度が非常に高く、一個のゲームとして完全に確立されています。まぁ、この完成度の高さが、後の作品に、これまた壁として立ちはだかるわけですが。
余談ですが、サルゲッチュの薄っぺらいカケルたちがスキーでレースをする、劣化版FF7のスノボ、ミニゲームだった頃が懐かしい。
SCEには、もう少し貪欲さを持ってほしかったところで、サルゲッチュの外伝的な立ち位置で、ドッチサッカー フットサルを発売して欲しかった。スカウトパート(簡易版サルゲッチュ)と試合パート、さらに育成パートなんかを加えれば、十分に単品作品としても成り立つレベル。
同系統のゲームにマリオストライカーズやシレン・モンスターズ ネットサルがありますが、2のミニゲームとしてのドッジサッカーと比べても、まったく歯が立たない。それだけに惜しい…。
このように個人的なサルゲッチュ2の評価は低いのですが、プレステ2というプラットフォームの地盤固め、という観点からなら評価できるのではないでしょうか。現にサルゲッチュ3が躍進しているわけですからね。
サルゲッチュ3の評価ポイント
バケルギア・システム
このシステムは本当に良いと思います。細かい部分まで突き詰めると、ギア毎の能力差などが挙げられますが、まぁ、ゲームなんてもんは往々にしてそんなもんです。サトルとサヤカでギアが微妙に違うキメの細かさも評価できますよね。
本作のプレイ時は、サルバトーレ未プレイだったので何も思いませんでしたが、その後サルバトーレをプレイしてみての感想としては、必殺技システムもぜひ組み合わせて欲しかったですね。
サルゲッチュ3でコレをやってしまうと、相手が弱くなり過ぎ難しいと思いますので、ぜひサル無双で。サル召喚にもう少しリアリティを持たせて、バケルギアや必殺技システムを上手く組み合わせれば、サル無双はゲームとして普通にありだと思います。
キャラというかモーション
サルゲッチュ3は、2に比べてプレステ2の能力を存分に活かしてますよね。特に注目したのがキャラクターのモーションで、サトルとサヤカが実に活き活きと動きます。
前作までと比べると、腕や脚などの細部にまでしなやかな動きが表現されていて、それでいてリアルになり過ぎないのが良かった。
リアリティを突き詰めると、今度はサルゲッチュの概念が崩れてしまうので、このバランス感覚は非常に練り込まれた部分だと思います。
そして、プレステ2の性能を活かした洗練されたモーションこそが、初作の壁である主人公カケルを打ち破る原動力になったのではないでしょうか。主人公に双子を採用して、プレーヤーに選ばせる策も良かったですね。まぁ、大体のプレーヤーがサヤカを選ぶと思いますが。
程良いキャッチーさ
本作のストーリーは、サトルもしくはサヤカおよび、アキエおばさん、Dr.トモウキ、スペクターによるコミカルなギャグ路線で進んでいきます。
まぁ、ゆとり世代以降のゲームやアニメ、漫画に見受けられるノリなんですが、時代はまだ2005年ということで、決して寒く(スベる)はありません。
現代に蔓延するソレは、キャッチーと寒いを混同しているからこそ程度が低いわけですが、サルゲッチュ3のは、程良いキャッチーさで収まっています。この差は何なのか?よくよく考えてみると、声優の技術の差なんですよね。
例えば、Dr.トモウキはギャグパートの中心人物にあたりますが、このキャラの声優は藤原啓治さんで、あのクレヨンしんちゃんの「野原ひろし」役です。野原ひろしと聞けばピンとくるほど特徴的な声の持ち主ですが、この人の起用は大成功だったと思います。
仮に、Dr.トモウキ役の声優に、最近流行りのイケボ系で技術のない声優を起用していた場合は、まったく違った評価になっていたはずです。
他にも、田舎っぺことウッキーレッドには、ドラゴンボールのミスターサタン及び牛魔王役でお馴染みの郷里大輔さんが起用されていて、なかなか味わい深い声優陣となっております。
また、トモウキやスペクターはもちろん、ウッキーファイブなどなど敵サイドのキャラクターが良い意味で立っているのも本作の持ち味ですね。
サルゲッチュ3のイマイチな部分
簡単すぎる?
バケルギア登場によって、本作ではかなり簡単にピポサルをゲッチュできます。特にワイルドウエストキッドやミラクルニンジャの有用性が異常で、これによりゲットアミやメカボーの意義がかなり薄くなってしまいました。
しかし、バケルギア導入にあたっては、ガチャメカとバケルギアを天秤にかける必要があるので、これはしかたがない部分でしょう。
むしろ、バケルギア使用制限ステージなどを作って、大多数のユーザーにストレスを与える選択をしなかった点は、評価できる部分です。
元々、サルゲッチュシリーズは歯応えに重きを置いたゲームではないため、この簡単すぎる部分は、シリーズの持ち味に上手く相殺されているのかもしれません。
ガチャメカの操作性
サルゲッチュ3は、かなり動きが滑らかにになったので、メカボーとゲットアミの操作が少し難しくなっています。
だからこそのバケルギアなのでしょうが、特にメカボーでダウンさせてからのゲットアミで捕まえる定番のコンボが使いにくくなったのは印象的でした。逆にダッシュフープで突撃してからゲットアミで捕まえるコンボは有用です。
個人的には、オヨゲッチャーに関しては残念で、サルゲッチュのように水中も作り込んで欲しかったですね。1のミズメカに比べて、3のオヨゲッチャーはかなり存在感が希薄になっていて、操作性もかなり悪いです。
バケルギアを最大限に活かせるステージがない
一騎当千とまではいわないものの、もう少しバケルギアの捕獲能力を活かせるステージが欲しかったですね。ワイルドウエストキッドやゲッチュマンの能力を最大限に使って、ゲットしまくる。
なんてステージがあれば、もっと楽しめたと思います。少しサルゲッチュの主旨とは変わってくるので、ミニゲームなんかで、この可能性を掘り下げて欲しかったような。
ライバルが欲しい
本作は、敵の主要キャラであるDr.トモウキがギャグ路線で、スペクターもどちらかといえば割と抜けた奴です。そのため、ギャグ一辺倒でストーリーが進んで行く傾向が見受けられ、個人的にはやんわりとしたスパイスが欲しかった。
前作まででいえば、1のヒロキのような存在が欲しくて、ライバル的な存在がいれば、全体的に引き締まるのではないでしょうか。サルバトーレのハルカのようなキャラを出して、共闘路線でも良かったかも。
BGMは控えめ
これもある意味で初作の壁なのかもしれません。シリーズの中で、音楽が秀逸なサルゲッチュやサルバト~レに比べると、かなりBGMが大人しいです。
正直、印象的だったのはバケルギアのピポサル時のBGMくらいで、これもサルバト~レの「ピポサルのテーマ」からの逆輸入ですからね。ひとつでも良いので、ゲーム史に残るような名曲が欲しかったですね。
メサルギアソリッド(笑)
メタルギアシリーズとのコラボということで、発売前から大々的に宣伝されていたような。しかし、サルゲッチュのファンであって、メタルギアソリッドのファンではない私にとっては、完全に邪魔な要素でしたね。
開発費を含めた貴重なリソースをこのミニゲームに割いたのは、本作最大の欠点かもしれません。結果としても、2のドッジサッカーに遠く及びませんでした。
サルゲッチュ3総評
これまでのサルゲッチュシリーズファンがしっかりと楽しめる内容なので、全体的な評価は高めですね。特に、2の低評価を挽回した部分は評価でき、大体のゲームは初作の後に一度転ぶと起き上がれません。
さらに、次作すら作らせてもらえないタイトルも多数あることを考えれば、人気シリーズとしての底力を持ってるんでしょうね。個人的には、バケルギアと洗練されたモーションに新鮮さを覚え、それなりにバランスが良かったので、終始楽しめた感じです。
作品毎の時系列としては、サルバト~レの後に本作が発売されましたが、私はサルゲッチュ3→ミリオンモンキーズ→サルバト~レという順でプレイしました。結果、サルバト~レのプレイ後、本作に対して色々と考えることもあって、今となってはこの順で良かったと思っています。
さて、サルゲッチュ3からミリオンモンキーズへとシリーズは続いていくわけですが、初作であるサルゲッチュの面白さを一言で表すなら「箱庭感」という言葉を使います。
ロックマンDASHのレビューでも詳しく説明したのですが、このサルゲッチュシリーズにおける箱庭感を完全に消し去ってしまったのがミリオンモンキーズかと思います。
サルゲッチュ3では、ややリアリティを抑えることによって辛うじてシリーズの持ち味を保っていた状態ですが、なぜミリオンモンキーズが、あの路線を目指したのかは、今になっても不明です。
3も箱庭感という意味では、1に遠く及びませんが、おそらくそれはステージコンセプトをTV番組にしたのが原因でしょう。よくよく考えてみると、1はタイムトラベル要素に加え、未開の地でピポサルを探すという探検要素がありました。
同じく箱庭感が非常に強いロックマンDASHにもこの要素はあります。どうやら、箱庭感は独特の世界観を持つ探検要素のあるゲームに宿りやすいようで、3は各ステージの奥行きがなさすぎるんですよね。
例えば、1のステージのひとつに、恐竜の体内を巡って、また外に戻ってくるというようなところがありますが、広さ自体は大したことがなくても、奥行きが半端ないんです。
冒険心をくすぐられるというのでしょうか?もし、サルゲッチュ3に、この箱庭感が宿らせることができれば、良作ではなく、神ゲーとして語り継がれたような気がします。
このゲームはデュアルショックせんようですっ!!