2019年2月。30年ぶりとも、40年ぶりとも言われる記録的な寒波が北海道を襲う。札幌市でも多くの家庭の水道が凍結し、中には破裂に至ったケースもあるようだ。
水道の水抜きは道民にとって生活の知恵
冬には気温が氷点下になる北海道において、水道管凍結予防の為の「水抜き」は生活の知恵です。しかし、札幌市の住宅の性能は、年々、高まってきており、環境によっては、シーズン中1度も水抜きしなかった、という状況も考えられます。
特に、一人暮らしを始めたばかりの若者は、年末の帰省前に、水抜きを行わず、水道管の凍結や破裂をさせてしまうケースが目立ちます。
また、本州から北海道に移住してきた方も、凍結の被害に遭ってしまう事が多く、北海道での生活を考えるなら、今一度、水道管の水抜きについて再確認する必要があるのではないでしょうか。
北海道の住居には水抜き栓が標準装備
賃貸を借りる場合、入居前に説明を受けるので知っているかと思いますが、北海道の住居には、水抜き栓が標準装備されています。
不凍栓などとも呼ばれ、一般的な止水栓とは違い、水流を止めた後に、2次側配管内の水を地中に放出する仕組みになっています。
凍結深度
水抜き栓周辺の水が凍ってしまったら、バルブが操作不能になってしまう。このような心配をしてしまうかもしれませんが、基本的に凍結深度に基づいて、配管や不凍栓が埋設されているため、その心配はありません。
凍結深度は、各地域の気象データに基づいて、地中の特定の深さ以降は水が凍らない基準です。北海道や札幌市の厳密な数値はわりませんが、凍結深度に基づいて、水道メーターや止水栓が埋設されているので、凍結してしまう心配はありません。
逆に、水道メーターや止水栓、水抜き栓が周りの水が凍結してしまった場合、施工不良が考えられるので、住民の責任にはならないでしょう。
水道管凍結=水道管の破裂?
スマホなどでネットの情報を調べると、水道管凍結=水道管破裂という情報が目立ちます。私は、これらの情報に違和感を持っており、「1度や2度の水道の凍結で水道管が破裂するか?」なんて思っていました。
実際に、「また水道管凍結させちゃった~テヘ」みたいな人物も北海道では珍しくないので、その度に水道管を破裂させているのかと考えると、疑問が残ります。
水は氷ると膨張する
水は、氷ると膨張します。よく、冷凍庫にビール瓶を入れたままにしておくと破裂する例えが用いられますよね。ただし、低温下でのビール瓶の脆弱性と配管の脆弱性は異なるかと思いますので、一概に比較はできないのではないでしょうか。
ざっくりと言って、水は氷る事により、体積が約1.1倍になります。ちなみに、水が凍結する時の圧力は凄まじく、水の凍結圧力により、コンクリートを粉砕する実験が行われるくらいです。
マイナス5度で水が凍った時の凍結圧力が60MPaらしいです。世界で最も深い地域であるマリアナ海溝の水圧が100Mpaなので、水道管の水が氷る際には、非常に強い圧力が管にかかっている事がわかります。
意外に破裂したケースは少ない
水道管内で水が氷る時、強力な圧力が配管にかかる事がわかりました。しかし、リアルでの体験談を聞くと、水道管を凍結させてしまうケースは多いものの、破裂に至ったケースは意外に少ないです。
また、北海道では、寒波が来る前にニュースやラジオなどで、水道管の凍結注意報なるもので、注意喚起されます。
すると、各局が水道管の凍結対策や凍結してしまった場合の対処法の企画を立ち上げます。お決まりの対処法が毎年のように流れるのですが、タオルを蛇口などに当てて40度~50度くらいのお湯をゆっくりかける、というのが定番です。
また、部屋を暖めて、自然解凍を待つ、という方法もよく言われます。このニュアンスからもわかると思うのですが、それほど緊急性は高くないような気がしませんか?
水の凍結圧力を知ると、必ず水道管が破裂してしまうようなイメージを覚えますが、実際にはそうではないようです。
ネット情報の罠
水道管の凍結について、ネットの情報を調べると、いくつかの罠がある事に気づきます。
アフィカスもしくは業者が情報源
ネットで水道管凍結の情報を調べた場合、大きく分けて3つの情報源に分かれます。ひとつがアフィリエイトで水道管業者のサービスの成約を狙うアフィカス。
もうひとつが、水道トラブルで生業にしている業者。更に、国や自治体により情報が発信されているケースです。
このうちアフィカスと業者の2種類は、水道トラブルを相談してもらう事により、メリットが発生する人達です。当然、水道管凍結=破裂という情報を発信した方が有利というバイアスが働きます。
つまり、基本的にこの手の情報は、水道管凍結=破裂に繋がる事により、危機感を煽りたい輩に支配されている可能性が高い、という点は踏まえておくべきです。
北海道以外の水道破裂事例もかなり多い
北海道の水道管は、寒冷地仕様になっており、北海道と本州の比較的温暖な地域では、水道管が凍結して破裂する状況そのものが違うとも考えられます。
最初に説明した水抜き栓も本州には付いていないケースも多いようですからね。
凍結時の水道管への圧力のかかり方
水道管の凍結により、水道管が破裂するかどうかは、この水道管への圧力のかかり方が大きなポイントではないでしょうか。
凍結による水道管の破裂事例を確認してみると、非常に多いのが、密閉時の破裂です。配管に水が満たされた状態で、中が氷ると膨張した分の逃げ場がありません。
加えて、凍結圧力は非常に強いという事で、この場合、水道管が破裂する可能性は高くなるのではないでしょうか。事実、水道管の末端に該当する蛇口や混合栓などの破損が目立ちました。
水道管の水が氷る場合、配管の位置関係などにより、何らかの方向性を持って、少しずつ凍っていく場合が多いようです。
末端から凍った場合
末端。つまり、トイレの給水口、蛇口、混合栓などの場所から凍結する場合、水道本管側に向かって、圧力が働いていきます。
最終的に、本管付近に強い圧力がかかる事になりますが、本管付近の配管は、末端に比べて、より丈夫に作られているようで、圧力が上手く逃げて破裂に至らない場合も多いようです。
逆に、本管側から水が凍った場合、末端付近に圧力が集中するので、破損する可能性が高くなってしまいます。
常時圧力がかかるわけではない
水から氷に変化する際には、強い凍結圧力が発生しますが、氷になった後も常時強い圧力が発生するわけではないようです。
しかし、微妙な温度の変化で、氷になったり、水になったりを繰り返す場合は、何度も配管に強い圧力がかかってしまう可能性があるようです。
水道管の圧力
水道管には、私達が使いやすいように圧力がかけられています。水道管が凍結して破損するかどうかには、この水道水の加圧分も計算する必要があります。
水道管が破裂するケースには、凍結状態で、送水する為の圧力がかかった状態により、破損に至るケースもあるようです。
つまり、凍結状態で、配管に圧力をかけておくのは危険という事がわかります。
凍結時は水抜き栓を締めるべし
リリースなのか、締めるなのか、表現がわかりませんが、北海道のような寒冷地なら凍結時は、まず水抜き栓を締めるのが無難ではないでしょうか。
自然解氷を待ったり、業者の対応が2日後などの場合には、水抜き栓を締めて、配管に圧力がかからないようにしておきましょう。
また、札幌のような北海道の中では、比較的暖かい地域だと、暖房を付けていれば、末端分の氷は時間経過で自然解氷するはずです。
さらに、一部の住居では、配管の立ち上がりの部分に解氷管が付いている場合もあるようです。配管を塩ビ管で覆ったような構造のようですが、私は見た事がありません。
水抜き栓を締める時は焦らずゆっくり
水道凍結により焦ってしまい、思いっきり水抜き栓を回し、壊してしまう可能性があります。
水抜き栓からバルブまで距離があるような場合、ロッドを使ってバルブを駆動させる構造になっている事も多いです。
このロッドが意外に脆く、バルブとロッドの固定部分が外れてしまう可能性もありますし、ロッド自体が腐食で折れてしまう事もあります。
そのため、ハンドルタイプの水抜き栓を締める時は、ジワリジワリとゆっくり力を入れて締めるのが無難です。破裂に焦って、水抜き栓を締めたものの、勢い余ってロッドが折れてしまうと洒落になりませんからね。
古い建物なんかだと、ロッドが外れた状態で放置された止水栓が結構あったりもしました。
凍結による配管の破損箇所と被害状況
エルボや継ぎ手部分は注意
エルボは、配管がカーブする場所に使われる奴です。配管がカーブしたり、継ぎ手によって配管が一時的に細くなる部分では、圧力のかかり方が変わります。
分散されていた圧力が、集中してしまうので、この部分からの破損は多いようです。
銅管は非常に弱い
配管の素材の中でも、銅管はかなり脆いようです。実際に、ネットで凍結による水道管破裂の事例を見てみると、銅管の亀裂から水漏れしているケースが目立ちました。
立ち上がりは鉄管のように見えても、シンクユニットを外すと、銅管だったりするので、その部分は脆いです。後は、給湯器まわりの配管も可能性がありますね。
給湯器
北海道の場合、給湯器が外に設置されているケースは少ないと思いますし、電源さえ入れておけば、ヒーターが働きます。
ボロアパートに住んでいる時に、帰省して3週間くらい家を空けた事がありますが、給湯器部分の水抜きは一切せずとも、破損した事はありません。
稀にヒーターが付いていない(笑)給湯器もあるようなので、1度くらいは取扱説明書を見て、確認した方がよいかもしれません。
賃貸の場合、大家持ちなら問題ありませんが、自費負担の場合、かなり高くつきます。また、凍結破損の場合、保証期間内であっても、対象外になる事は多いので、注意しましょう。
給湯器の電源を落とすとOAダクトのダンパが閉まる音がするのですが、それでも風が強いと氷る事があるんですかね?てか、強風時は、凍結防止範囲の気温でも氷る事がありますって、めっちゃズルい書き方だよなぁ~。
混合栓
原始的な構造の蛇口が凍結で破損するくらいなら、漏水の被害さえ防げれば、大した出費にはなりません。しかし、混合栓の場合は話が変わってきます。
水とお湯の蛇口をひねって、自分で温度調整するような、なんちゃって混合栓なら問題ないのですが、サーモ内臓の混合栓の場合、故障するとかなり費用がかさみます。
便器
陶器が使われている便器は、封水トラップ内の水が氷ると、ガッツリ割れて破損する可能性があります。かといって、封水トラップの水を抜くと、部屋中に悪臭が立ち込めるなんて事も…
封水内に不凍液を混ぜるというのが対応法のようですが、私は今まで1度もやった事がありません。というか札幌では、あまり一般的ではないような。
ただし、万が一、破損した場合は、かなり高くつく事になるでしょう。
アパートの二階以降に住む人は注意
札幌の場合、中央区のマンションに住むような人は、ほとんど水抜きの経験もないのではないでしょうか。札幌で注意が必要なのは、やはりアパートでしょう。
特に二階以降に住む人は要注意で、漏水した場合の被害が下の階に及ぶ可能性が高いです。
実は、札幌のボロアパートであっても、下の階に人が住んでいる場合、1日くらいの寒波では水道管が凍結する事は少ないです。
しかし、下の階が空室の場合は、かなり神経質になる必要があります。構造のショボいアパートの場合、日中に暖房を入れっぱなしかつ、生活用水をそれなりに使ったとしても、氷ります。
水の使い方によっては、日中や、冷えてくる夜間に普通に凍ることもあるので、アパートに住んでいる人は、冬の前に、下の階の空室状況を確認しておくのもよいと思います。
北海道の火災保険は凍結破損も対応してくれる
賃貸で水道を凍結させてしまった場合に怖いのは、下の階への漏水被害です。これにより、数十万、数百万に被害額が跳ね上がる可能性もあります。
しかし、道民にとっては、水道凍結というのは、割とよくあるトラブルなので、賃貸を契約する際に加入する火災保険の補償範囲に含まれている事がほとんどです。
当然、下の階の住民も加入していると思いますし、下の階の被害についても補償範囲に含まれているはずです。
北海道で、火災保険を使う場合、水道破裂の被害が、かなり多そうなので、事前に補償範囲を確認し、万が一、漏水や設備の破損があった場合の対応を知っておくのもよいですね。
ただし、水道凍結の解氷作業については、自費負担になる事が多いです。
今までに1度だけ凍結による水道破裂を目撃した事がある
自宅の水道を破裂させた事はありませんが、凍結により水道管が破裂した状況を目撃した事が1度だけあります。
以前、仕事関係で、札幌中心部のビルの解体現場を見学させてもらった事があるのですが、かなり規模の大きなビルです。
丁度、冬季の解体だったのですが、トイレというトイレのフラッシュバルブの上蓋が吹き飛んでました。ほんと、例外なくという感じで、フラッシュバルブを中心に山型の氷が形成されていました。
メインパイプから分岐してすぐのゲートバルブは閉じており、送水圧がかかっていない状態でも、弾け飛んでましたね。